萬年筆とまほろば

万年筆でくらしを豊かにするブログ。

万年筆との出会い(後編)

前回更新記事【第3回】万年筆との出会い(中編)クイズの答えはこのページの一番下に記載しました。
当たっているか、どうぞお確かめ下さい。

 

ボールペン探しから万年筆の世界へと誘われる

f:id:digitalwind:20170228233057j:plain

写真は、カランダッシュ ボールペン RNX.316コレクション 4580-080 PVDブラック

 

紆余曲折ある、自分に最適なペン探しの旅。
そんな中、インターネット上のレビューで、国産ボールペンは海外メーカー製よりも書き味は素晴らしいのにボディが安っぽい。
そのため、ブランド価値で大きく負けてしまっているという意見がありました。

私は今まで文房具には無頓着で、安物の使い捨てボールペンばかりを使っていました。
街中でタダでもらったボールペンをインクが出なくなるまで手荒に扱っていました。
逆に、海外メーカーには「安っぽくないボールペン」がそんなにたくさん存在するのか、とも思いました。

 

また、ボールペン以上に高級品が存在するのが「万年筆」とのこと。
5万円以上もするブランド舶来品(モンブランペリカンなど)に対し、国産品は見劣りするとの意見もありました。
(現在、私の主観では国産品・舶来品それぞれによさを感じています)
万年筆とは一体どんなペンなんだろう、と素朴な疑問がわいた訳です。

 

大げさですが、「開けてはいけない扉」が目の前にあるような予感がしました。
現代から忘れ去られ、風化しかけた扉の中で、未だに熱い伝統のマグマが煮えたぎっているような気がしました。
両親や祖父母が現役で活躍していた時代にタイムスリップして当時の空気を吸いに行くような感覚。
重く古びたその扉を一気に開き、私は新たな世界へと誘われたのです。

 

生まれてこの方、万年筆を見たことがなかった私

残念ながら、私の周囲には万年筆を使っている方が一人もいませんでした。
街の小さな文房具屋には万年筆が置かれていない現実。
仕方なく万年筆についてインターネットで調べまくる日々が始まりました。
万年筆の歴史やブランド、書き味やインクの種類、紙との相性に至るまで、全く興味がつきませんでした。
興味を持ったことを自発的に調べるのはメチャクチャ楽しい! 幸福な時間があっという間に流れていきます。
万年筆は100年ほどの歴史があるため、当時の人たちはどのように使っていたのか、現代の私たちならどう活かせるのか、想像が膨らみます。

人間にとって文字を書くことは、言葉を話すことの次に大切です。
誰かに何かを伝え、残すための行為です。
万年筆は、なぜか文字を書く行為そのものを楽しくしてくれます。
書くことが人々の中心だった時代に生まれたツールです。
あなたもぜひ一度、万年筆を手に取ってみてください。
シャーペンやボールペンと違い、なぜかペン自体が存在を強く主張します。
否が応にも、書くことに真摯に向き合うよう意識させられます。
先人たちは、万年筆に書きやすさ、文字の美しさ、長時間筆記でも疲れない設計を追求しました。
また、ペン軸に多様なデザインを施し、コレクション性をも与えました。

 

万年筆は世界で唯一、あなた好みの書き味に成長する!

万年筆の他にない特徴としては、書き味が使い込むほどに自分仕様に最適化され、愛着の持てる特別な一本に育つことです。
現代にはスマホタブレットなど便利な道具があり、スタイラスペンによってアイデアをそのまま液晶画面に書き残すことができます。しかもデータ保存されるため、コピーや拡散も容易です。

しかし、字幅はアプリで変えられても、書き味は画一的です。
様々な万年筆のペン先(ニブ)から伝わる官能的な書き味までは真似できません。
万年筆のペン先は種類が豊富。同じ字幅でもメーカーによって書き味が異なります。
さらにインクの種類や紙質によっても感覚が変化するため、選択肢は無限大です。
もし、自分にとって極上のペン先が見つかれば、書く行為がこの上ない楽しみを生むのです。
脳と指先がスムーズにリンクし、湧き出るアイデアが紙の上でどんどん具現化されます。
まさに万年筆(fountain pen)。※fountainとは「噴水」を意味します。
たかが書く道具。されど、人間の感覚に寄り添うことのできる、数少ない道具の一つです。

万年筆の極上の感覚は現在の電子ツールではまだ再現できておりません。
情報伝達・時間短縮が優先されているため、ペン先が生む感覚的な楽しさは、むしろ意図的に除外されてしまっているように感じます。
現代の電子媒体(スタイラスペン)の感覚に慣れている方にも、ぜひ万年筆のペン先が持つ多種多様な書き味を知っていただきたいです。
万年筆は見ても書いても楽しめるツールです。
過去の遺物として除外してしまうのは大変惜しい。
できれば、その楽しさをデジタルの世界にももっと取り入れてほしい。
それが万年筆もデジタルも大好きな私の願いです。

 

私の文具収集の変遷

2016年8月末から4ヶ月間で集めてしまった万年筆とインク、その他文具がこちら↓

f:id:digitalwind:20170301001220j:plain

f:id:digitalwind:20170301001254j:plain

f:id:digitalwind:20170301001331j:plain

f:id:digitalwind:20170301001403j:plain

f:id:digitalwind:20170301001607j:plain

f:id:digitalwind:20170301001742j:plain

f:id:digitalwind:20170301001952j:plain

f:id:digitalwind:20170301002045j:plain

f:id:digitalwind:20170301002109j:plain

 

とんでもないことになっています。。

 

万年筆は生涯あなたに寄り添うパートナーになる

万年筆を使う前の印象は、作家が使うもの、古臭くて高価、管理が大変、旧時代の遺物、といった普段の私の生活とは縁遠いものというネガティブな印象ばかりが先行していました。

しかし、いそがしい毎日を送る現代人にこそ、万年筆が大きな助けになると思います。
なぜなら、アイデアが非常に出しやすい上に肩も凝りにくいからです。


万年筆は、力を入れずとも紙に置くだけでペン先からインクがスムーズに流れ出て文字が書けます。
ボールペンのようにペン先を紙に強く押し付ける必要もありません。
後から自分の筆跡を見返した際、その時いだいていた感情までもが蘇ります。
間違えた箇所も完全には消せないので、自分の思考の足跡をたどることができます。
筆記時の感情を文字に閉じ込め、後で見返した時にはその場の状況を思い起こすこともできます。

 

f:id:digitalwind:20170301010735j:plain

また、インクの色を選ぶ楽しみもあります。
一度吸入したインクは完全に無くなるまで頻繁には取り替えられません。
なぜなら、他のインクに替える際にはぬるま湯によるペン先、胴軸内またはコンバーターの洗浄が必要となるからです。
メンテナンスを怠ると、最悪ペン先が詰まってインクが出なくなる要因となります。


このメンテンスの面倒さが、時代の流れにより、使い捨てボールペンに取って代わられた要因です。
同一インクで毎日書き続けるのであれば洗浄は不要ですし、洗浄自体もやってみるとインク替えの儀式みたいで楽しいですよ、コレ。
よりインク交換が手軽なカートリッジ式の万年筆もあります。

 

しかし、制約の楽しさと申しましょうか。
万年筆は、「自分ルール」でインク交換ができるのです。


例えば、季節ごとに。
春には桜の花びらをイメージした淡いピンク色で白い紙のキャンバスに文字を散らしても面白いです。
初夏には南国の海を連想させるターコイズブルーに替えるのも爽やかでいいものです。


また、茶色のボディ(胴軸)の万年筆から緑色のインクが出てくれば、自分自身が木になった気分になれます。
本当に書くことだけに特化したツールが万年筆なのです。

あなたも今すぐお気に入りの万年筆を一本、探してみてはいかがでしょうか?

 

前回【第3回】更新記事 クイズの答え

お待たせしました。

前回「【第3回】万年筆との出会い(中編)

クイズの出題と答えは、以下のとおりです。

 

(問題)
ご紹介した下記シャーペン7本の中で、後に私が手に入れた万年筆(モンブラン マイスターシュテュック 149)と一番近い長さのものは一体どれでしょうか?

  1. パイロット シャープペンシル レグノ ダークブラウン(HLE-250K-DBN
  2. カヴェコ ペンシル 2.0mm ペンシルスペシャル ブラック(PS-20)
  3. カヴェコ ペンシル 0.5mm ペンシルスペシャル ブラック(PS-05)
  4. プラチナ万年筆 プロユース0.3mm 製図用シャープペン シルバー(MSD-1000A)
  5. ステッドラー シャープペン シルバーシリーズ 0.3mm(925 25)
  6. ぺんてる シャープペン グラフ1000 フォープロ 0.3mm(PG1003)
  7. ぺんてる シャープペン グラフギア1000 0.3mm(PG1013)

f:id:digitalwind:20170301000059j:plain

※ 左から右へ1、2、3、4…と配置

 

答えは?

f:id:digitalwind:20170228193551j:plain


………7のぺんてる シャープペン グラフギア1000 0.3mm(PG1013):149.5mm(実測値)!

ではなく、

f:id:digitalwind:20170228193524j:plain

………6のぺんてる シャープペン グラフ1000 フォープロ 0.3mm(PG1003):146mm(実測値)!

でもなく、

f:id:digitalwind:20170228193456j:plain

5のステッドラー シャープペン シルバーシリーズ 0.3mm(925 25):143.5mm(実測値)
でした!

 

(答え)
ステッドラー シャープペン シルバーシリーズ 0.3mm(925 25):143.5mm(実測値)
※(参考)モンブラン マイスターシュテュック 149:144.7mm(実測値)

 

大きい順に

  1. ぺんてる シャープペン グラフ1000 フォープロ 0.3mm(PG1003):146mm
  2. 【万年筆】モンブラン マイスターシュテュック 149:144.7mm
  3. ステッドラー シャープペン シルバーシリーズ 0.3mm(925 25):143.5mm

となります。

 

上記2本のシャーペンは、マイスターシュテュック 149との差が1.3mmと1.2mmで、

わずか0.1mmの僅差ですが、ステッドラー シャープペン シルバーシリーズ 0.3mm(925 25)が正解です。

f:id:digitalwind:20170301000649j:plain

 

万年筆とシャーペンを比べることは滅多にないと思いますので、新鮮に感じられたのではないでしょうか?
もし楽しんでいただけたなら幸いです。
それでは次回の更新もお楽しみに!


【第4回】万年筆との出会い(後編)