万年筆との出会い(後編)
前回更新記事【第3回】万年筆との出会い(中編)クイズの答えはこのページの一番下に記載しました。
当たっているか、どうぞお確かめ下さい。
ボールペン探しから万年筆の世界へと誘われる
写真は、カランダッシュ ボールペン RNX.316コレクション 4580-080 PVDブラック
紆余曲折ある、自分に最適なペン探しの旅。
そんな中、インターネット上のレビューで、国産ボールペンは海外メーカー製よりも書き味は素晴らしいのにボディが安っぽい。
そのため、ブランド価値で大きく負けてしまっているという意見がありました。
私は今まで文房具には無頓着で、安物の使い捨てボールペンばかりを使っていました。
街中でタダでもらったボールペンをインクが出なくなるまで手荒に扱っていました。
逆に、海外メーカーには「安っぽくないボールペン」がそんなにたくさん存在するのか、とも思いました。
また、ボールペン以上に高級品が存在するのが「万年筆」とのこと。
5万円以上もするブランド舶来品(モンブランやペリカンなど)に対し、国産品は見劣りするとの意見もありました。
(現在、私の主観では国産品・舶来品それぞれによさを感じています)
万年筆とは一体どんなペンなんだろう、と素朴な疑問がわいた訳です。
大げさですが、「開けてはいけない扉」が目の前にあるような予感がしました。
現代から忘れ去られ、風化しかけた扉の中で、未だに熱い伝統のマグマが煮えたぎっているような気がしました。
両親や祖父母が現役で活躍していた時代にタイムスリップして当時の空気を吸いに行くような感覚。
重く古びたその扉を一気に開き、私は新たな世界へと誘われたのです。
生まれてこの方、万年筆を見たことがなかった私
残念ながら、私の周囲には万年筆を使っている方が一人もいませんでした。
街の小さな文房具屋には万年筆が置かれていない現実。
仕方なく万年筆についてインターネットで調べまくる日々が始まりました。
万年筆の歴史やブランド、書き味やインクの種類、紙との相性に至るまで、全く興味がつきませんでした。
興味を持ったことを自発的に調べるのはメチャクチャ楽しい! 幸福な時間があっという間に流れていきます。
万年筆は100年ほどの歴史があるため、当時の人たちはどのように使っていたのか、現代の私たちならどう活かせるのか、想像が膨らみます。
人間にとって文字を書くことは、言葉を話すことの次に大切です。
誰かに何かを伝え、残すための行為です。
万年筆は、なぜか文字を書く行為そのものを楽しくしてくれます。
書くことが人々の中心だった時代に生まれたツールです。
あなたもぜひ一度、万年筆を手に取ってみてください。
シャーペンやボールペンと違い、なぜかペン自体が存在を強く主張します。
否が応にも、書くことに真摯に向き合うよう意識させられます。
先人たちは、万年筆に書きやすさ、文字の美しさ、長時間筆記でも疲れない設計を追求しました。
また、ペン軸に多様なデザインを施し、コレクション性をも与えました。
万年筆は世界で唯一、あなた好みの書き味に成長する!
万年筆の他にない特徴としては、書き味が使い込むほどに自分仕様に最適化され、愛着の持てる特別な一本に育つことです。
現代にはスマホやタブレットなど便利な道具があり、スタイラスペンによってアイデアをそのまま液晶画面に書き残すことができます。しかもデータ保存されるため、コピーや拡散も容易です。
しかし、字幅はアプリで変えられても、書き味は画一的です。
様々な万年筆のペン先(ニブ)から伝わる官能的な書き味までは真似できません。
万年筆のペン先は種類が豊富。同じ字幅でもメーカーによって書き味が異なります。
さらにインクの種類や紙質によっても感覚が変化するため、選択肢は無限大です。
もし、自分にとって極上のペン先が見つかれば、書く行為がこの上ない楽しみを生むのです。
脳と指先がスムーズにリンクし、湧き出るアイデアが紙の上でどんどん具現化されます。
まさに万年筆(fountain pen)。※fountainとは「噴水」を意味します。
たかが書く道具。されど、人間の感覚に寄り添うことのできる、数少ない道具の一つです。
万年筆の極上の感覚は現在の電子ツールではまだ再現できておりません。
情報伝達・時間短縮が優先されているため、ペン先が生む感覚的な楽しさは、むしろ意図的に除外されてしまっているように感じます。
現代の電子媒体(スタイラスペン)の感覚に慣れている方にも、ぜひ万年筆のペン先が持つ多種多様な書き味を知っていただきたいです。
万年筆は見ても書いても楽しめるツールです。
過去の遺物として除外してしまうのは大変惜しい。
できれば、その楽しさをデジタルの世界にももっと取り入れてほしい。
それが万年筆もデジタルも大好きな私の願いです。
私の文具収集の変遷
2016年8月末から4ヶ月間で集めてしまった万年筆とインク、その他文具がこちら↓
とんでもないことになっています。。
万年筆は生涯あなたに寄り添うパートナーになる
万年筆を使う前の印象は、作家が使うもの、古臭くて高価、管理が大変、旧時代の遺物、といった普段の私の生活とは縁遠いものというネガティブな印象ばかりが先行していました。
しかし、いそがしい毎日を送る現代人にこそ、万年筆が大きな助けになると思います。
なぜなら、アイデアが非常に出しやすい上に肩も凝りにくいからです。
万年筆は、力を入れずとも紙に置くだけでペン先からインクがスムーズに流れ出て文字が書けます。
ボールペンのようにペン先を紙に強く押し付ける必要もありません。
後から自分の筆跡を見返した際、その時いだいていた感情までもが蘇ります。
間違えた箇所も完全には消せないので、自分の思考の足跡をたどることができます。
筆記時の感情を文字に閉じ込め、後で見返した時にはその場の状況を思い起こすこともできます。
また、インクの色を選ぶ楽しみもあります。
一度吸入したインクは完全に無くなるまで頻繁には取り替えられません。
なぜなら、他のインクに替える際にはぬるま湯によるペン先、胴軸内またはコンバーターの洗浄が必要となるからです。
メンテナンスを怠ると、最悪ペン先が詰まってインクが出なくなる要因となります。
このメンテンスの面倒さが、時代の流れにより、使い捨てボールペンに取って代わられた要因です。
同一インクで毎日書き続けるのであれば洗浄は不要ですし、洗浄自体もやってみるとインク替えの儀式みたいで楽しいですよ、コレ。
よりインク交換が手軽なカートリッジ式の万年筆もあります。
しかし、制約の楽しさと申しましょうか。
万年筆は、「自分ルール」でインク交換ができるのです。
例えば、季節ごとに。
春には桜の花びらをイメージした淡いピンク色で白い紙のキャンバスに文字を散らしても面白いです。
初夏には南国の海を連想させるターコイズブルーに替えるのも爽やかでいいものです。
また、茶色のボディ(胴軸)の万年筆から緑色のインクが出てくれば、自分自身が木になった気分になれます。
本当に書くことだけに特化したツールが万年筆なのです。
あなたも今すぐお気に入りの万年筆を一本、探してみてはいかがでしょうか?
前回【第3回】更新記事 クイズの答え
お待たせしました。
クイズの出題と答えは、以下のとおりです。
(問題)
ご紹介した下記シャーペン7本の中で、後に私が手に入れた万年筆(モンブラン マイスターシュテュック 149)と一番近い長さのものは一体どれでしょうか?
- パイロット シャープペンシル レグノ ダークブラウン(HLE-250K-DBN)
- カヴェコ ペンシル 2.0mm ペンシルスペシャル ブラック(PS-20)
- カヴェコ ペンシル 0.5mm ペンシルスペシャル ブラック(PS-05)
- プラチナ万年筆 プロユース0.3mm 製図用シャープペン シルバー(MSD-1000A)
- ステッドラー シャープペン シルバーシリーズ 0.3mm(925 25)
- ぺんてる シャープペン グラフ1000 フォープロ 0.3mm(PG1003)
- ぺんてる シャープペン グラフギア1000 0.3mm(PG1013)
※ 左から右へ1、2、3、4…と配置
答えは?
………7のぺんてる シャープペン グラフギア1000 0.3mm(PG1013):149.5mm(実測値)!
ではなく、
………6のぺんてる シャープペン グラフ1000 フォープロ 0.3mm(PG1003):146mm(実測値)!
でもなく、
5のステッドラー シャープペン シルバーシリーズ 0.3mm(925 25):143.5mm(実測値)
でした!
(答え)
ステッドラー シャープペン シルバーシリーズ 0.3mm(925 25):143.5mm(実測値)
※(参考)モンブラン マイスターシュテュック 149:144.7mm(実測値)
大きい順に
- ぺんてる シャープペン グラフ1000 フォープロ 0.3mm(PG1003):146mm
- 【万年筆】モンブラン マイスターシュテュック 149:144.7mm
- ステッドラー シャープペン シルバーシリーズ 0.3mm(925 25):143.5mm
となります。
上記2本のシャーペンは、マイスターシュテュック 149との差が1.3mmと1.2mmで、
わずか0.1mmの僅差ですが、ステッドラー シャープペン シルバーシリーズ 0.3mm(925 25)が正解です。
万年筆とシャーペンを比べることは滅多にないと思いますので、新鮮に感じられたのではないでしょうか?
もし楽しんでいただけたなら幸いです。
それでは次回の更新もお楽しみに!
【第4回】万年筆との出会い(後編)
万年筆との出会い(中編)
木製ボールペン:三菱鉛筆 油性ボールペン ピュアモルト
私が万年筆と出会う3ヶ月前。
職場の同僚から1本の「木のボールペン」をいただきました。
そのボールペンとは「三菱鉛筆 油性ボールペン ピュアモルト」。
ウィスキーの樽材として長年使用されたオーク材を削り出して作られた、太めのボールペンです。
当時、文房具に全くこだわりがありませんでしたが、木のボールペンを所持したのは初めてだったため大変嬉しかったです。
使用するペンが変わると、自分がより大人になれた気がして身も引き締まり、仕事でもヤル気がアップしました。
仕事での自分の武器(仲間)なので、現在も愛用中。
木の素材に大変興味を持った私は、次にインターネットで木のシャーペンを探し始めました。
シャーペンにも種類がたくさんある
2016年8月下旬、木のシャーペンを探し始めた私。
インターネットで見つけて最初に買ったのが、パイロット シャープペンシル レグノ ダークブラウン(HLE-250K-DBN)。
ネット上で高評価のため、Amazonにて2100円で購入しました。
木の質感がよく、金属パーツとのバランスも絶妙。
書き味も良好で、他とはひと味違う雰囲気を持った精巧なシャーペンだと感じました。
しかしながら、ペン軸が細みで木の表面がつるつるしており、私の手にはどうにも滑りやすいのが気になりました。
ペン軸があと3~5mm太ければ握りやすかったのですが。
私の好みとして、見た目は大事だがそれ以上に実用性にもこだわりたい、という点に今さらながら気づかされました。
木の素材にこだわらず、もっと握りやすい形状のシャーペンがほしい!と考え始めたため、次なる理想のシャーペン探しの旅が始まりました。
その後の購入履歴は以下のとおり。
○2016年8月購入
○2016年9月購入
- カヴェコ ペンシル 0.5mm ペンシルスペシャル ブラック(PS-05)
○2016年10月購入
- プラチナ万年筆 プロユース0.3mm 製図用シャープペン シルバー(MSD-1000A)
- ステッドラー シャープペン シルバーシリーズ 0.3mm(925 25)
- ぺんてる シャープペン グラフ1000 フォープロ 0.3mm(PG1003)
- ぺんてる シャープペン グラフギア1000 0.3mm(PG1013)
偶然ですが、私が購入した上記シャーペンは、新しく買ったもの(ページの下に行けば行く)ほど順に、ペン軸が長くなります。(カヴェコの二本だけは同じ長さです)
立て続けにシャーペンばかりこんなに買ってどうするのかという疑問はごもっともです。
ですが、ネットの評判と自分の好みに乖離がある以上、店頭で試筆するか、購入する以外に確認する方法がありません。
結果、私のお気に入りナンバー1は、
カヴェコ ペンシル 2.0mm ペンシルスペシャル ブラック(PS-20)です!
芯は「ステッドラー ホルダー芯 マルスカーボン(200-2B)」を使用しています。
一般的なシャーペン芯サイズ(0.5mmや0.7mm)と比較して、2.0mmという2B極太芯で書く感覚は、おおらかで非常に楽しいものです。
字を書くというよりもデッサンなどに向いていると思います。
ただ、書いているとすぐに芯が丸くなってしまうため、「三菱鉛筆 シャープナー ユニ 2.0mm芯ホルダー用ポケットシャープナー(DPS6001P)」を使って芯を細く削ります。
鉛筆の芯を削る感覚なんて、小学生時代以来忘れてしまっていたため、大変新鮮な気持ちにさせられます。
このカヴェコ ペンシル 2.0mm ペンシルスペシャル ブラック(PS-20)は、手に取るとなんだかポッテリとした、何ともかわいいヤツです。
一方、字を書くという意味で一番のお気に入りは、カヴェコ ペンシル 0.5mm ペンシルスペシャル ブラック(PS-05)の方ですね。
ペン軸の長さ・太さは、上記カヴェコ ペンシル 2.0mm ペンシルスペシャル ブラック(PS-20)とまったく同じです。
八角形軸がとにかく持ちやすいのです。
シャーペンに関して、私は元々太軸が苦手なのですが、最大径10mmの軸の太さが私の感覚には絶妙にフィットしました。
クリップはオプション品で別売りとなっていますが、私には不要です。
ペンを手の中でコロコロ回しても、クリップが邪魔しないので心地よいです。
当たり前ですが、カヴェコ ペンシル 2.0mm ペンシルスペシャル ブラック(PS-20)とは違い、カヴェコ ペンシル 0.5mm ペンシルスペシャル ブラック(PS-05)は、芯を削る必要がないのでやはり便利です。
三菱鉛筆 シャープ芯 Hi-Uni 0.5 HBを入れて使っています。
ついに、私にとって理想のシャーペンが見つかりました!
これ以上、新たなシャーペンを手に入れる必要性が無くなりました。
後に万年筆を手に入れることになるのですが、ここで一旦、小休止でクイズを出題!
クイズ
今回ご紹介したシャーペン7本の中で、後に私が手に入れた万年筆(モンブラン マイスターシュテュック 149)と一番近い長さのものは一体どれでしょうか?
答えは次回記事にて!
あなたがもし既に万年筆をお持ちなら、初めての一本目はどのような経緯で入手しましたか?
コメント欄に書き込んでいただけると嬉しいです!
それではまた!
【第3回】万年筆との出会い(中編)
万年筆との出会い(前編)
万年筆は現代人にとって「よくわからない古い筆記具」
唐突ですが、あなたはご自身の人生の中で「万年筆」に触れたことがありますか?
万年筆ってそもそも何?という方も多いと思います。
私もそんな人間の一人でした。
万年筆とは、今のボールペンに相当する、1960年頃まで主流だった筆記具のことです。
ごく一部の万年筆愛好家を除けば、万年筆を常用している現代人はおそらく皆無だと思います。
生活必需品でもないし、見たことも触ったこともない。
作家や政治家、大会社の社長が愛用するものという印象で、家族・知人で所持している方を私は知りません。
街の文具店でも、万年筆は私の視界に一度たりとも入ってきたことがありませんでした。
まさにそんな「空気」と同レベルの存在感の薄さ!
作り手の思いや技術が長年に渡って脈々と受け継がれているのに、現代人には全く気づかれることのない存在。
時代の流れに取り残された製品。
ボールペンに比べ、管理が面倒な製品。
勝手なイメージではオジサン臭い製品。
万年筆のイメージは、現代人にとって何だか「よくわからない古い筆記具」となっているのが現状です。
しかし、過去とはいえ一時代を築いた製品であることには変わりなく、
現代においても様々な変化を遂げて生き残っているのです。
万年筆のように、100年以上の歴史を誇る製品はなかなかありません。
私が惹かれたのは「書くこと」、ただこの1点において、最高に楽しくなる道具だということです。
デザインも種類が豊富で飽きないですし、書き味も一本一本異なります。
もし自分に合った最良の一本を見つけられたら、一日中書いていても飽きないので、
アイデア出しや情報整理に大活躍することでしょう。
あなたも魅力的な万年筆の世界に足を踏み入れてみませんか?
万年筆との遭遇
万年筆に触れたことのない現代人が、どのような経緯でその存在を知り、手にすることになるのでしょうか。
今まで万年筆など気にしたことのなかった私ですが、半年前ついに入手しました。
私の場合、万年筆ではなくボールペンに関心を寄せたところから始まりました。
↓ 詳しくは次回更新記事:「万年筆との出会い(中編)」参照
徐々にボールペンからシャーペンへと興味は移り、書く道具という意味では一級品である万年筆を持つに至りました。
書く行為が快感に変わる道具、それが万年筆なのです。
仕事でアイデアを書き出すのが楽しくなる道具を探していた私にはピッタリとハマりました。
シャーペンほど均一でつまらない線ではなく、ボールペンほど力を入れずに書ける。
万年筆は、ペン先の字幅が始めから決まっているにもかかわらず、線に抑揚がつけられるため、書いた時の感情がそのまま文字に表れるのが面白いです。
線の太さをコントロールする意味では毛筆が最高なのですが、一般人には扱いが難しく、管理も面倒です。
万年筆のメンテナンスは、毛筆ほど面倒ではなく、ペン先を月1回ぬるま湯で洗浄するか、同じインクを補充するだけです。
最近は染料インクが多いので、水に溶けやすく洗浄は容易となっています。
それにインク交換は、科学実験みたいで楽しいですよ。
使い捨てではない、使えば使うほど自分仕様にカスタマイズできる最高の筆記具、それが万年筆の正体です。
手がかかる製品ほど、愛着も湧きますし大事にもします。
万年筆を手にしてみると、無個性な存在ではないことがハッキリとわかります。
私は率直にこう思います。
「なんでこんなにいいモノをみんな使わないのかなあ?」
なぜ現代人は万年筆を使わなくなったのか?
道具には「動」と「静」の性質があります。
「動」は外向きの力が働きやすく、「静」は内向きの力が働きやすい性質を示します。
時代の流れにより、求められるものが「動」と「静」で、振り子のように入れ変わります。
時代が他者優位の場合、「動」の製品が求められます。
例えば、ボールペン、シャーペン
特徴としては
- 実務重視
- 貸し借り容易
- 大量生産
- 安い
- 使い捨て
- 使用者側にこだわり無し
- 自己表現不要
- 平凡で均一
一方、時代が自分優位の場合、「静」の製品が求められます。
例えば、万年筆、毛筆
特徴としては
- 自己満足(他人は他人)
- 貸し借り困難
- 限定生産
- 高い
- 質重視
- コレクション
- 使用者側にこだわりあり
- 自己表現可能
- 大胆で芸術的
万年筆は元々、徹底的に自分本位な「静」の道具です。
なぜなら、他人のためではなく、己の手足となるべく追求された筆記具だからです。
長年の使用により、自分自身にのみ、寄り添います。
だから、他人に貸すことができません。
○どんな状況でどのペンを使うのがベストなのか?
- 書く行為そのものを楽しみたい場合(自分のため)
→万年筆・毛筆
- 実務で使用する場合(他人のため)
→シャーペン・ボールペン
実務重視の現代において、書く行為そのものにスポットライトが当たりにくくなっていることが、万年筆が使われない要因となっています。
職場や学校では、書いた情報が素早く相手に伝わりさえすればよく、
逐一キャップを回す必要がなく、代わりはいくらでもすぐに用意できるノック式のボールペンが重宝されるのもうなずけます。
仮に乱暴に扱って傷が付いたり落としたとしても、精神的ダメージを受けない点やインク漏れのリスクがない点も大きなメリットです。
過去、そんなボールペンの手軽さの前に万年筆は敗北し、私たちの生活から消えてしまいました。
格安万年筆の登場
ボールペン以上のメリットが、万年筆に残されているのでしょうか?
正直なところ、職場や学校では、ボールペンに勝る活躍の場が万年筆にはありません。
事実は事実です。
しかし、あなたが自分自身に向き合う場(特に自宅)では存分に効果が発揮されるのです。
例えば、あなたが自分の部屋でゆったりと過ごす時間。
心に余裕を持ち、楽しく自分の文字を見つめ、書きつづる。
ペン習字のような美しい文字、個性丸出しのあなたらしい文字。
どんな文字であっても、指先から伝わる感覚がワクワク感を生み出し、新たな発想を引き出す。
他人に伝えるためだけの味気ない文字ではなく、自分の体内から湧き出てきた、独善的な文字を表面化させる。
そんな時は、ボールペンではなく、あえて万年筆を手に取るのが最適となります。
どんな精神状態でも、文字に個性が表れるからです。
そんな万年筆の面白さを現代人に気づかせた商品があります。
それが最近登場した「格安万年筆」の存在です。
今まで万年筆というと、価格が5,000円以上は当たり前。
高級万年筆では5万円を超えるものも多く、手に入れるのが難しい商品でした。
そんな中、格安万年筆は1,000円以下で買えるものもあり、ハードルが大幅に下がりました。
高品質な格安万年筆が登場したことで、万年筆のよさが改めて見直され始めました。
「静」の性質である万年筆の製品群に、一部「動」が加わってきているのです。
格安万年筆の一例
万年筆の書く楽しみは享受しつつ、仮に壊れたとしても安いのでまた買い直せばよい、という気軽さが万年筆初心者にウケています。
また、何本も所有することができるため、様々な色のインクを試すのにも一役買っています。
万年筆初心者への間口が広がったことにより、逆に高級万年筆にも光が当たるようになってきています。
高級万年筆にしか採用されていない、18金・21金ペン先を堪能したり、インクや紙との相性を確かめるなど、楽しめる要素がたくさんあることに気づく人が少しずつ増えています。
これも万年筆が長年淘汰されず、残り続けたお陰です。
万年筆の今と昔
万年筆の世界は、入り口が極端に狭く、ハマると恐ろしく奥深いものです。
1960年代頃まで、万年筆はポピュラーな筆記具でした。
しかし、その後のボールペンの普及に伴い、次第に生活の表舞台から消えていきました。
現在、万年筆は風化し、砂塵に埋もれ、まさに知る人ぞ知るモノとなってしまいました。
2007年頃、若い女性を中心に静かな万年筆ブームが訪れました。
しかし、私の耳は節穴のようでして、全く気づかずスルーしてしまいました。
万年筆が世間に知れ渡るほどの大きな変動も無いまま、2017年現在に至ります。
ただし、大ブームにはならずとも、インターネットの普及により
万年筆の魅力に気づき始めた若者のファンが少しずつ増えているのも事実です。
ITだけに頼らず、自分の言葉、自分の筆跡で大切な人に思いを伝えたい。
湧き出た自らのアイデアを気持ちよくまとめたい。
そんな願望を代弁するツールとして、万年筆が再評価されつつあるのかもしれません。
もちろん希少性のあるファッションアイテムとしての一面も捨てきれませんが。
インターネットを通じて私の視界に万年筆が入ってきたことも、今後違う形で再燃しつつある前触れではないかと思います。
溢れ出る物欲
私自身、万年筆を初めて一本所持してからというもの、購買意欲が旺盛になってしまい、こらえるのが大変でした。
(万年筆のレビューについては今後アップしていきます)
自分に最適な一本を探していたはずが、徐々に本数が増えていきました。
万年筆の増加に比例して、ボトルインクまでもが増える始末。
結果だけを振り返れば自分でも驚くほど買ってしまいましたが、知らないことを調べ、比較し、手に入れようとするプロセスは何よりも楽しいものです。
これほどまでにハマるとは!
万年筆、恐るべし!
この先は話が長くなるので、次回「万年筆との出会い(中編)」に続きます。
いそがしい方はお時間がある時にお読み下さい。
もしよろしければ、どうぞお付き合い下さい。
【第2回】万年筆との出会い(前編)
萬年筆とまほろば
ついに私のブログ「萬年筆とまほろば」を開設しました!
「まほろば」とは、日本の古語で「素晴らしい場所」「住みやすい場所」という意味です。
お仕事で人様のブログを管理していたことは多々ありましたが、自分自身のブログは初めてなので今更ながらドキドキしています。
「萬年筆とまほろば」では、万年筆を通じて、あなたの生活に変革をもたらすコツをわかりやすくご紹介いたします。
また、個人収集した万年筆やインクのレビューも随時公開予定です。
他の万年筆サイトと内容が重ならないよう、極力独自の視点から情報を発信いたします。
例えば、
- 万年筆と「出会う」
- 万年筆を「愛でる」
- 万年筆を「育てる」
などなど。
万年筆の世界は、知れば知るほど魅力が満載です。
メーカー・デザイン・字幅・特殊ペン先・インク・紙など、豊富なバリエーションがあります。
あなたにもぜひ万年筆の楽しさや奥深さを知っていただけたらと思います。
なぜ私が万年筆という枯れた(失礼?)ツールを趣味にしているのか?についても、少しずつ語っていけたらと考えています。
どうぞお楽しみに!
このブログが真の意味で「まほろば」になるまで続けていきます。
今後とも「萬年筆とまほろば」を何卒よろしくお願いいたします。
なお、当ブログ「萬年筆とまほろば」では、"まんねんひつ"の漢字を、
・ブログタイトル:「萬年筆」
・ブログ記事内 :「万年筆」
と区別して表記します。
理由は、私が今後ブログを長く続けていく上で重要となるタイトルとして、「神秘性」や「郷愁」が感じられるものにしたかったからです。
一方、ブログ記事においては、日常生活をつづるものなので、常用漢字で使われることの多い「万年筆」を採用しました。
過去に思いをはせつつ、あなたも私も現代に生きている。
万年筆が過去と未来の架け橋となることを願って。
すべては下の写真の文具との出会いから始まった! 詳しくは次回更新時に!